アダルトチルドレンと耳にしたことがあると思います。その背景には自分の環境を選ぶことができなかった過去が、大きく関係しています。思い当たることがあれば、先ずは自分に気付くことから始めましょう。過去を受け止め、未来の自分を信じましょう。
アダルトチルドレンとは何か
子供のような大人のことではない
アダルトチルドレンとは単に用語を訳すると「子供のような大人」となりますが、そうではありません。体は大人だけど、中身は子供で心が未熟な人のことと誤解されているのですが、それは違います。
小さい頃、育った環境が原因で今の自分の心や、考え方に悪影響を与えているとしたら、そこにはあなたにもアダルトチルドレンの可能性があるかもしれないのです。
機能不全家庭で育ち悩みを抱えている人
子供時代に機能不全家庭で育つことにより、正常な成長過程を踏むことができなかったために、大人になっても傷を抱えている人たちがアダルトチルドレンと呼ばれているのです。
「Adult Children」を略して、アダルトチルドレンは「AC」ともいうのです。ACは病気ではないのです。
アダルトチルドレンは多くの人が当てはまるということです。小さい頃の環境が完璧だったという人は少ないと思います。
多くの悩みは自分自身の性格が原因で起こり、その性格は育った環境からが原因で存在します。アダルトチルドレンの度合いは強弱あるものの、多くの人が少なからずその要素を持っているのです。
機能不全家庭とはどんな家庭のことか
アルコールに依存している親がいる家庭
元はアルコールに依存している親を持ち、成長の過程での境遇(虐待、愛情不足、親の不在など)が影響して、考え方や感じ方に偏りが生じ、大人になっても生きづらいという悩みを抱えている人のことだったのです。
現在はアルコールに依存している親がいる家庭だけではないのです。
虐待などが無い環境でも、幼少期に身に付いた考え方や感じ方に偏りがせいで、社会に適応できないなどの問題を抱えている人はアダルトチルドレンである可能性があるともいえるでしょう。
虐待が日常的にあった
「虐待」というと、激しい暴力やせっかんなどの「体の虐待」や「性的虐待」という暴力的な行為が虐待と思われがちですが、それだけではありません。ほかにも「心理的虐待」、「ネグレクト」これは育児放棄です。
虐待が発生する背景に、虐待する者は子供のころに虐待されていた。と、いう負のスパイラルが多いことがわかっています。
親が子を虐待するときは虐待だとわからず、単に愛情表現が間違っており、お前のためだ、お前が悪いなど、親としての立場で押し付けた愛情表現だったり、親が子供を支配し私物化し、心理的にも追い込むことも虐待となるのです。
虐待をしてしまう行為は、される側が悪いのではなく、虐待する側に未解決なメンタル問題があるからです。それは例え、年を重ねている親でも同じです。
でも、虐待を受けた子は親のいうことを無意識に信じてしまい、自分自身のことを責め続けてしまいがちになるのです。
過剰な期待を親から受けていた
親から期待をされること自体は悪くはありません。全く期待されないというのも、子供からすると悲しいものです。自分に感心がないと感じる場合もあります。逆に、期待されすぎるというのも子供を抑圧し、トラウマを作り出すことになります。
過剰な期待を親から受けていた子供にすると、日々の生活を楽しむことも難しくなって余裕を無くし、不安感が募る中で完璧を求められてしまいます。
子供は親を喜ばせるために期待に応えようと、自然に自分を演じてしまうようになり、期待されるほど自分の感情を押し殺したり、傷付いたりしながら生きていることがあります。子供は親に決められた役を演じながら成長していき、自由にのびのびとした自分の人格を形成する機会を失います。
演じたままの人格ができてしまい形になると、本来の自分の人格とのズレが生じるため生きづらい悩みを抱えやすくなります。
そして、期待され続け、それに応えてきたACはその後、同じように人に期待しすぎる大人になってしまいます。
過保護に育てられた
過保護な親に育てられた子供は甘やかされていたり、身の回りの世話を全て親任せだったり、何でも親が先回りして手を貸してくれていたので、自分一人では何もすることができず、自立できずに育ってしまいます。
親の引いたレールに乗ることも多いので、大人になっても自分の判断で行動できないことがあります。
また、何かをしてくれることが愛情だと感じるので、自分を見てくれないと不安になる傾向もあります。
親の保護の元で失敗や危険のリスクの少ない状況で育ってきたので、経験に乏しく失敗を恐れる行動力のない人間になりやすいのです。
機能不全家庭で育った子供の共通点はのびのびと過ごすことができなかったり、安心して過ごせなかった過去があるので、親の顔色をみて行動します。
すると、自分で苦難や失敗を乗りこえる力が育っていない子供になってしまい、社会生活でトラブルが起きると、自力で乗りこえることができず、自己解決できなくなり、引きこもりや不登校になることもあるのです。
ACなのかチェックしてみるには
チェックできるサイトがあるサイトを利用してみる
もし現在、生きづらさを抱えていて、機能不全家族で育った過去と当てはまったなら、アダルトチルドレンかどうかの診断テストを受けてみましょう。
AC診断テストは、インターネットで無料で受けることができます。この診断テストで、もしアダルトチルドレンであるという診断がでたら、一度カウンセラーなどに相談してもいいかもしれません。
ただし、ACチェックは診断を断定するものではないので、これらの診断テストはあくまで簡易的なものになります。
クリニックでカウンセリングを受けてみる
クリニックでカウンセリングを受けてみると、ACなど心の病気を克服することができます。生きづらさの原因を探り、克服の糸口を見つけることができます。
過去の環境で失った自分をとり戻し、自分で認識することが大切になるのです。人それぞれ、育った環境やそれまでの人生はさまざまですから、その人にあったカウンセリングが必要になるのです。
大人になってからも続く習慣
常に相手の顔色を窺う
ACの人は、自己評価がとても低く自分に自信がありません。そのため、他人の評価をとても気にします。親に嫌われないために顔色をいつも窺っていた習慣性からです。
自分で自分を評価できずに、自分に満足できず、いつもがんばりすぎて疲れきってしまいます。突然、会社を辞めてしまったり、引きこもる人も見られるようです。自分は価値のない人間だと思い込むことも多いようです。
このほか「自分は愛されないんだ」「人から受け入れられてもらえない」「自分なんか」といった、思い込みを強く持っています。
自分の意見がない
子供の時は親のいうことを聞いているといい子で、少しでも反抗するとわがまま、自分勝手などといわれるのです。親の考えや態度は絶対的なものです。親のいう通りにして来たため、社会に出ると自分の意見がいえません。
ACは、日常的に親にいっても無駄、耳を傾けてくれない、意見しても否定されるようなことをいわれ続けている為に、大人になっても自分の意見や、NOといえない間違った認識を持っているのです。
間違った認識とは家族の間で自分の意見をいうことを諦めてしまうか、行き場のない抑圧された感情が爆発したりします。それが、大人になってからも心の中でくすぶっている状態です。
そのため、自分の思ったことを素直に口にできなかったり、社会に出ると自分の意見をいうことが怖くて否定されそうで、過去のトラウマからいいたいこともいえない状態のまま、感情だけを押し殺します。
自分のことが嫌い
ACの人は親に愛されている実感がないうえに、愛情不足のまま育ってしまうと、自分の中に安心感で満たすことができません。一方で、安心感で満たす経験がない、または少ないと常に何らかの不安や怖れを感じるようになるのです。
自分という存在を確立できないので、自分の価値が見い出せなかった、ということにつながってしまうのです。
愛情に飢えているので親を世話して役に立つことで自分の価値を認めてもらおうとするしかないのです。子供のうちから親のお世話をする習慣が無意識についているのです。
かわいそうな親を助けてあげるつもりでやっていることが、実は返って親のためになっておらず、ますます親が子供に甘えて依存し、子供も親も自立することができないというパターンに陥っている人がとても多いです。
その結果、自立できずに誰かに、何かに依存してしまうのです。そうすると、自分自身を守るために、自分の内側に閉じこもってしまうのです。
相手との距離をどうとったらいいのかわからない
ACの人は他者との接触を恐れる人もいます。人との接し方を親から正しく学べずどうしていいかわからないまま、家族が家族としての役割ができていない中で育ったために、相手に対してどこまで踏み込んだら、どのような反応をされるのかという反復練習ができないまま大人になってしまっています。
それで、周りの人と距離をどうとったらいいのかわからなく、壁を作ってしまうことが多いです。
普通に人と親しくなるのは得意なのですが、そこから先に親しくなればなるほど、なぜかその人から距離を取ろうとしてしまうのです。
自分の領域をどこに設定したらいいのかわからないので、相手との距離間をとるのが苦手だという感覚かもしれません。
ACの考え方の特徴
極端に白黒つけたがる
物事を極端な考え方をするのはACの特徴で、白黒つけて分けて考えようとする傾向があります。
自分と違うものを「好き」と「嫌い」や、「正しい」と「間違っている」というように、極端な2択ですべての物事を捉えてしまうことが多いのです。
例えば、友人が挨拶を返さなかったとします。すると、きっと嫌われているんだ。とすぐに考えるのが白黒つけたがるタイプの特徴です。
もしかしたら、友人は考え事をしていて上の空だったのかもしれませんし、挨拶を返したけれど聞こえなかったのかもしれません。
さまざまな要素があるにもかかわらず、白黒つけたがるタイプだと、短絡的に「嫌われている」と考えてしまいます。
このように、選択肢の幅を狭めてしまい、自分を追い込む事も少なくありません。極端な考え方をするのはACの特徴なのです。
マイナス思考でネガティブなことを言う
マイナス思考が強く、良い出来事でもそのまま受け取らず、悪い方へ考える傾向があります。
深読みし、ネガティブなことをいってしまいます。
悪いイメージの連鎖になり、そこから抜け出せなくなることもあります。
深読みしすぎて、ネガティブな考えをするのは、ACの典型的な考えなのです。
不安感や焦燥感、見捨てられ不安になりやすく、自己価値の低くくみてしまうからです。自己評価の低さから
自分はいい事が起こるはずがないという思い込みを持ちやすいのが特徴です。
物事を客観的に見れない
自分で感じていることが全てだと思ってしまうので、客観的な捉え方が出来ないのです。
なので、最初に抱いた考え、いわゆる「先入観」に執着してしまいがちになります。あとから色々な意見が出てきて、論理的に「間違っている」という結果が出ても、一度思い込んでしまうと考えを簡単に変えることができません。
また、周囲が抱えている責任が自分の責任でもあると思い込んでしまったら、「それは自分の責任だから」と周りの責任を過度に背負ってしまう傾向があります。
周りの人から「あの人は頑固だ」と思われる人は、実はその頑固さの裏側にはACが隠れているのかもしれません。
事実とは違う評価をする
自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価するのもACの特徴で、悪いことはオーバーに考え、良いことは過小評価するのです。逆に他人の成功を過大評価し、他人の欠点は見逃します。
事実とはかけ離れた評価をするというのは、ACに見受けられる傾向です。
相手を欠点のない素晴らしい人間だと思い込んだり、あの人はとても悪い人だと思い込んだりしてしまい
傷ついてしまうこともあります。
ACを克服するために
自分のことを知る努力をする
子供のころは自分の意志で親や環境を選ぶことができません。全てが、親や保護者の意志で決定されてきた過去と環境です。
大きく成長した頃、反抗期を迎えて、それでも抑圧されてしまった自分の気持ちや意志を改めて考えてあげ、その感情や意志を尊重してあげることを知りましょう。
ACの考え方の癖を理解すること、そして自分がそうだったんだと知ることが大切です。
ACで悩む人の多くは、感情を表に出すことが難しかったり、そもそもできなかったりする人が少なくありません。そこで、少しでも感情が揺さぶられるような映画、ドラマや芸術に触れ、感情が動くと認識するところから始めてみましょう。
時間が係るかもしれませんが、感情の動きが分かるようになると、自分を客観視できる別の自分も現れてくるようになるため、自分を受け入れる体制が自分の中で整うようになります。
過去を振り返り親について知る
ACは過去の幼少期からの積み重ねで、自分に身に付いているものだと気付くことから始めます。親にもさまざまな理由があり、決して完ぺきではない弱さがあったことを知ることも大切です。
家族や環境、身の周りの人間関係、遺伝もあるかもしれません。しかし、気が付いたときに大切なのは過去を恨むんでも何もなりません、大切なのは今なのです。そして、これからの自分です。
過去は変えられない、過去に感情を囚われていては、感情は救われないと理解しましょう。
変えられない過去にジレンマを感じていておるより、大切なのは事実を受け止め、現在を良くする方法を考えることがAC克服につながっていきます。
ACであっても、未来は変えることは可能なのです。
感情を解放できるようにする
ACの人は幼少時代に感情の抑圧を強いられてきました。親の機嫌を伺い顔色をみながら、親に合わせて生きていく中で、自分の感情を持つことなどできなかったのです。
しかし、これは不自然なことで、感情を抑圧していたからこそ、今問題が起こっているわけです。ですから、素直に感情は解放してあげないといけません。
思いっきり泣いたり、怒ったり、笑ったりした後ってすっきりした気持ちになるように、子供の頃、感情を抑圧していたということは、気持ちがすっきりせずにモヤモヤした状態が続いていたということです。
子供の頃に、感情を抑圧されていた時をふり返って考えていきましょう。抑圧されてきた感情をノートに書き出すなど、感情を解放していけるようにすると、過去のトラウマから気持ちが少しずつ解放され、楽になっていきます。
ACは考え方や感じ方の偏りだと捉えよう
子供の頃の生活環境で、大人になっても生きづらいと自分に感じることができたら、それはACに気付き始めてきたのです。ACは病気ではないので、自分の考えや、受け止め方、感じ方の偏りだけなのです。
その感情を解放をすることで、トラウマから抜け出すことができます。
過去は変えられませんが、未来は自分のものです。そこを理解できたら、やっと抜け殻から飛び出すことができます。あとは自由に羽ばたきましょう。