「やおい」という聞きなれない用語に興味を持った方も多いはず。この「やおい」を意味や用語として、どのように使われているのかを深く掘り下げていきます。一体この言葉はどのようにして生まれたのかそんなところにも注目してみました。
「やおい」ってどういう意味?
物語性が乏しい創作物のこと
誕生の歴史から見ていくと、1970年代後期ごろに「ヤマなし、オチなし、イミなし」の頭文字をとった略語として使い始められたのが「やおい」の始まりです。現在は「男性同士の恋愛をテーマとした女性向けの二次創作」という意味で使われています。
一般的に目を避けるべき濡れ場などを含むものもすべて指している用語です。同人の中では自虐的要素を含んだ用語でありました。用語が定着したのは1980年代後期ごろに、雑誌に「やおい」と言う用語が現代で使われているように、同じ意味として使われるようになったんだそう。
この当時は、今の「萌えが重視された面白みのない日常系の漫画」に対して批判的だったようで、同人作品のほとんどが「アニメや漫画のキャラクターたちの妄想カップリングを描いた二次創作」が多かったのです。
漫画、同人誌の世界から広まってきた言葉ではありますが、「物語性に乏しい漫画や小説などの創作物のこと」を指しているとしていると言うことがお分かりいただけたかと思います。
男性同士の恋愛をテーマとした同人用語
商業作品(漫画や小説を販売したもの)や同人作品をとわず、男性キャラクター同士の恋愛や絡み合い、それを匂わすシーンが盛り込まれた女性向けの創作物の総称として「やおい」は同人用語として使われています。最近ではそれをBL(ボーイズラブ)と呼ばれることが多いです。
また、同人と呼ばれる既存の物語であるアニメや漫画の男性キャラクターを使用してアニメのパロディーを作っているものを二次創作物とも言いますがその作品においても同様となっていて「やおい」と呼ばれています。厳密には「やおい」と「BL」には違いがありますので後ほど。
「やおい」という用語が出てくるまでは、男性同士のそういった恋愛や性関係を描いたものは「美少年もの」や「ホモマンガ」などと呼ばれていたよう。
恋愛関係にない二者間における特別な関係性
恋愛関係にない二者において、お互いの関係が友情以上で、ある特別なものを感じさせる関係性のことも指しています。このポイントはセックスをしていないと言うところがポイントです。
そして男性間に限定されるものではなく女性間、異性間であってもこの用語は使われ、性別というもので分けているのではなく人間同士の関係の在りかたが使われ方の違いになります。
ですので、最後まで平行線を保ちながらたまに交わる関係性であり、女性漫画などでありがちな最初反発しあっているがだんだん好きになるという関係は含まれないといいます。このことから、セックスをしていない性愛を含む関係性は「やおい」ではないとしています。
別名「801」と数字で書かれることも
別名では801と数字で書かれることもあるのですが、語呂あわせでそのまま801(やおい)と表記されるものもあります。他にもYAOIやヤオイともかかれますが、現代のネット掲示板でもある2chには801板と言う書き込む投稿口があるほどです。
この語呂合わせにも、最初にあげた大元の意味でもある「ヤマなし、オチなし、イミなし」は、あの手塚治虫が挙げたダメなマンガの特徴が、男性同士の性描写だけで構成された一部のBL作品があてはまるからと、腐女子の間でBLのことを隠して801と使われるようになりました。
海外では「やおい」をしっかり日本独自の文化として捉えてくれている傾向にありますが、「スラッシュ」という「BL」と似たような作品が海外には1970年代からあるようですが混同していないようで、YAOIと表記されて海外でも人気があるようです。
「軟らかい」を意味する方言
鳥取・博多などの下関付近で話される方言として「やおい」はあります。形容詞で使われ、標準語の「やわらかい」と同じです。使われ方は、「このトマトは、やおいなあ」と言うように使われています。特に歯ごたえがなくやわらかい様を指した方言だそうです。
このように物理的な物の柔らかさだけでなく性格の柔らかさを現すときには「ひ弱な」に似た、批判的な意味をこめて使われていることが多いのだそうですが、広島弁での「やおい人」は女性から男性に対して使う際には批判的な印象はないそうです。
「やおい」と「BL」と「JUNE」の違い
男性同士の恋愛模様を描いている点は共通
3つの共通点としては男性同士の恋愛模様を描いているというところは同じです。この3つの用語についてはそれぞれに違いがありますので以下でそれぞれについて掘り下げます。
明確な違いがあるものもあれば、「やおい」の用語の意味についても若干あいまいな部分もあるように感じます。時代や使う人によって意味合いに揺れがあるために明確な定義づけが難しいものもあるですが、この3つの違いについてはできる限り明確にしていきたいと思います。
オリジナル作品か二次創作という違い
まず一つ目の定義づけとしては、「やおい」は二次創作で、「JUNE」「BL」はオリジナル作品であると言うことです。元々分かりやすくパロディ作品を「やおい」と読んでオリジナルや原作と区別していたところからも来ています。
ですので、本として出版されるような商業誌などとなった作品に関しては、オリジナルでなければ肖像権や版権など色々な権利により販売ができませんので、販売しているものに関してはBLとしてとらえてよいです。
また、「やおい」という言葉には本来の意味でもあるネガティブなイメージが先行しやすいため、売り出している作品に対して同様のイメージをつけるようなことは極力避けたいものです。売上に少しでも左右されてしまうこともあるため、「BL」というカテゴリになっています。
「JUNE」は雑誌名
かつて1970年代頃は、「二次創作パロディ(やおい)ではなく、オリジナルの小説・漫画作品のもの」をJUNEものと呼んでいたようです。JUNEはその当時あった雑誌名で、株式会社マガジン・マガジンが発行していた「女性向けの男性同性愛をテーマとした漫画小説混合雑誌」のことです。
このJUNEでは、男性同士の恋愛だけでなく、女性同士の恋愛ものや、少年とエイリアンの恋愛を描いた小説も掲載されていたよう。
当初の意味とは異なり、読者の美意識に沿うものは何でもJUNEとしている動きも合ったようですが、耽美の色が濃くなり、現代の意味合いとしては、退廃的で耽美的なものをJUNEとしているようです。
「BL」にはテンプレがある
BLは何なのかとなるとこれまでをまとめると、オリジナル作品でネガティブイメージが付いておらず商品として販売もしているものであり、少年や青年同士の恋愛がテーマとなったストーリーを描いた作品のことです。
そもそもBL(ボーイズラブ)と言う用語は割りと新しくて、1990年代出てきた用語でこの言葉も和製英語ですので、BLは日本独自の文化でもあります。海外にもしっかりと認知されています。
一般的にBLは女性、腐女子向けにできている作品が多く、中にはBL作品を楽しむ男性「腐男子」までいるのだそうです。またガールズラブを「百合」として対になるボーイズラブを「薔薇」として使われることもあります。
また、BLには必ず、途中に絡み合うエッチなシーンがあるのが特徴です。中には過激なものもあれば、極力押さえたものもあり、最近は20〜30代の男性(青年)が主人公の作品も多くなってきているといわれています。
「やおい」用語の基礎知識
一定の主題を元にする「アンソロジー」
複数の同人作家の作品を掲載した同人誌のことを指します。イベントや定期的に、企画者がとりまとめて発行していきます。同人での出版ですので、出版社を通さないで個人で発行となります。商業や個人を問わずに何人かの作品を集めて1冊にしたものです。
オムニバスと同じように考えると分かりやすいかと思います。またアンソロジーは参加費用を参加者は負担しません。複数の同人作家で印刷代を割って費用を負担してできたものは「合同誌」と呼ばれ、作品の報酬は定められた原稿料もしくは現物支給となるようです。
性交の際の「受け」と「攻め」
ボーイズラブにおける受けと攻めは、性交の際の位置づけとなります。まず「受け」は、女性側の役割に値する側になります。つまりセックスのときに相手の男性器を挿入される側のことを指しています。ちなみにゲイ用語ではネコと言います。
「受け」のキャラクターにはBLの作者や読者が自身を投影する場合が多いですので、外見、性格ともに比較的女性的に描かれることが多い。ですが中には身体がすごく鍛え上げられていてマッチョなのに「受け」なんていうこともあります。
反対に「攻め」は、男性側の役割のことですので同じようにセックスする際には相手に男性器を挿入する側になります。ちなみにゲイ用語ではタチと呼ぶのだそうです。こちらは作者や読者の理想の男性像が組み込まれたキャラクター性が強く、受けをリードするといった男性が描写が多いのが特徴となっています。
受けと攻めにも細かくいろんな種類がありますが、BLなどに触れる際にこの用語は何だろうと迷った際には検索してみると面白いですし、作品にも入り込みやすくなります。
受け攻めが入れ替わる「下克上」
先ほど説明した「受け」と「攻め」が途中で入れ替わるのがこの「下克上」です。通常の漫画やアニメなどではこのようにキャラクターの性格などの設定をよほどのことがない限りは変えないのですが、BLでは落ちのつけかたとして、とてもポピュラーなんだとか。
また年齢が下であったり立場が低い人が攻めとなっていたり、年上や立場が高い人が受けとなるカップリングの事やその状況についても「下克上」と呼びます。これは私たちの知っている下克上となんとなく意味が似ているので分かりやすいですよね。
恋愛関係にある者の呼び名「CP」
CPと略していますが「カップリング」のことです。同人内のキャラクター同士の恋愛関係を表す言葉として使われています。このCPはBLだけではなく異性でも、女性同士でも使える用語でもあります。
作品の中で恋愛対象となる2人のキャラクターを組み合わせたもので、表記としては「キャラクターA×キャラクターB」のように表記します。ただ、間にある×はたびたび省略されるようです。×の前にあるキャラクターが「攻め」で、後に来ているキャラクターが「受け」となっています。
その他にも細かく表記を見ていくと、友人だったり敵対していたりという、キャラクター同士の関係性が一目瞭然にも成るのでとても便利です。
違いを知って興味のあるものを読んでみて
それぞれに違いがあることが分かりましたよね。「やおい」は二次創作パロディー、BLはオリジナル作品ということだけでも分かるだけで、見立てがぜんぜん違いますよね。今はだいぶ手に取りやすい、ネット環境で閲覧可能なBLの作品を少し見てみてはいかがでしょうか。
その前にBLに関する用語もいくつか調べて覚えておくとスムーズに読むことができますし、内容に関しても頭に入っていきやすいので、「BLを読むなら知っておくといい用語」などで検索してみるのもいいかもしれません。
そこまでできたら、「やおい」や「BL」などご自分の興味のわいたものを手にとって一度読んでみませんか。新しい世界観に新しい刺激を得られるかもしれません。